細胞内への過剰な脂肪蓄積はインスリン抵抗性を惹起し、2型糖尿病、動脈硬化、脂肪肝など種々の病態を引き起こす。我々は細胞内脂肪滴形成に関わる蛋白を「貯蔵遺伝子」と呼称し、その遺伝子発現を制御することにより、これらの病態の発症・進展を予防する手段を探索している。貯蔵遺伝子の一つであるAdipose differentiation-related protein(ADRP)は脂肪肝で高い発現を示し、ADRP発現を遺伝子工学的に抑制すると脂肪肝発症が抑制される。我々はフランス海岸松樹皮抽出物ピクノジェノールの作用をマクロファージで解明し、さらに本肝細胞でのADRP発現を抑制する効果を明らかにした。今年度は、ADRPと同様に種々の細胞で発現を示す貯蔵遺伝子であるTip47のマクロファージにおける発現調節機構について解析した。マクロファージにおいてToll-like receptor 9を介する炎症刺激により発現が増強されることを示し、Tip47はとくに中性脂肪の細胞内蓄積に働くことを明らかにした。次に、抗酸化食品成分アスタキサンチンが脂肪肝抑制効果を有することから、慢性C型肝炎のペグインターフェロン・リバビリン療法におけるアスタキサンチン同時摂取のHCV排除効率改善効果に関する臨床試験を実施した(臨床試験倫理審査委員会承認)。また、抗酸化食品成分ピクノジェノール摂取の末梢血白血球遺伝子発現に及ぼす効果を解析するため、摂取前後での遺伝子発現プロフィールの変化を網羅的に解析し、有意に発現が増加または減少する遺伝子を明らかにした。
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