平成21年度は昨年度に引き続き基礎検討を実施し、運動負荷血管機能検査法の簡易プロトコールを構築した。 ・各種強度の運動負荷に伴う脈波の経時的変化に関する検討 対象:20歳前後の男女10名を対象とした。なお何らかの疾患治療中、あるいは服薬中の者や、運動負荷が危険と医師が判断した場合は除外した。 方法:(1) まず3名の被験者に対し、激しい運動負荷として階段昇降を5分間行わせた(ボルグスケール18程度)。 (2) 被験者全員にステップ台を用いたステップ昇降運動で、運動条件を以下のように設定して運動を負荷した。 <運動条件>ボルグスケールの11~13となるような強度で60回/分のペースで10分間のステップ昇降運動 (1)、(2)の運動負荷前、負荷終了5分後から5分間隔で30分後まで、経時的に脈波の測定を実施した。脈波としては、form ABI/PWVを用いて上腕-足首脈波伝播速度(baPWV)等を測定した。 結果:激しい運動負荷となる5分間の階段昇降後に全例でbaPWVの低下が観察され、血管のスティフネスが下肢を中心とした激しい運動負荷により再現性良く低下することが示された。この低下は30分以内に運動前値に復した。次に、より安全な運動負荷条件下で同様の現象が観察されるかを(2)で確認したところ、この条件の運動負荷は被験者に過度の負担を与えることなく、(1)のような激しい負荷に類似したbaPWVの変化をもたらすことがわかった。 また(2)の負荷条件において、baPWVの低下の程度や回復までの時間に明らかな個人差が認められ、運動習慣のある被験者ほどbaPWVの低下が大きく、その持続時間が長い傾向が認められた。運動負荷によるbaPWVの変化は、これまでアーチファクトとして検査前の運動は避けるといった視点で捉えられていたが、本研究により運動負荷後のbaPWVの低下が生活習慣病予防の観点から積極的な意義を持つ可能性が初めて示唆された。
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