今年度初めに所属大学が変わり、当初計画した運動効果の横断的検討や縦断的検討を実施することが不可能となったので、動脈硬化予防に対する運動効果を確認する代わりに、動脈硬化のリスクを高めるような食事の急性負荷が本研究で開発した評価指標に及ぼす影響について検討することとした。負荷として、すでに血管内皮機能障害をもたらすことが報告されている高脂肪食負荷を採用した。対象者に、高脂肪食として某ファーストフード店のメニューを組み合わせて、総エネルギー量980kcal、脂質52gに相当する食事を摂取させた。この高脂肪食摂取後、血中トリグリセリド値がピークとなることが予想される3時間経過後に、ステップエクササイズ(ステップ高20cm、120bpmで10分間)を行い、運動負荷後脈波検査を実施した。高脂肪食負荷前、負荷3時間後の血液検査の結果、血清トリグリセリド値の上昇、血清亜硝酸/硝酸塩濃度の低下、白血球数の増加が観察され、トリグリセリドリッチリポタンパクや白血球に由来する酸化ストレスの結果、血管内皮細胞由来の一酸化窒素が減少し、血管内皮機能が障害される血管内環境であったものと推察された。高脂肪食負荷後3時間経過してステップエクササイズを行った後、直後から10分おきにbaPWV検査を実施したところ、運動直後から20分後にかけてbaPWVの低下が観察され、運動による動脈スティフネスの低下が見られた。しかし高脂肪食負荷日とは別の日に行ったコントロール試験結果と比較して、平均値で運動直後、10分後において高脂肪食負荷後の方が高い値を示した。すなわち高脂肪食負荷により、運動後の動脈スティフネス低下が抑制される結果が示された。以上の結果は、高脂肪食負荷による血管内皮機能低下を運動負荷後脈波検査法により観察できたものと考えられ、本評価法が軽微な動脈硬化リスクを検出できる可能性を示すものと考えられた。
|