研究概要 |
スポーツ活動時に突然死の頻度が高い高齢者では,老化により、「向」血栓に作用するVWFと「抗」血栓へ作用するADAMTS13の働きにバランスの崩れが生じている可能性が考えられるため、運動習慣を有する高齢者22名と大学生(若年成人)15名を対象に、安静時およびスポーツ活動前後におけるVWF産生について比較検討した。また、高齢者では、老化によるVWF産生能の変容に加え、口渇感の鈍化による水分補給の頻度・量の減少による脱水の影響が予想されるため、夏季スポーツ活動中の自発的脱水の程度(脱水率)についても測定を行った。その結果、若年成人(Y群)と高齢者(O群)の練習時における体重あたりの脱水率には有意な差はみられなかった(Y群vs.O群:1.36±0.16vs.1.04±0.14%)。物理的運動強度(3759±109vs.2161±164step/h)は,O群がY群より有意に低い値を示した.しかし,少人数ではあるが運動中における心拍数は両群でほぼ同等であった(123±4vs.121±3step/h),このことは相対的運動強度においてはO群がY群より高かったことを意味している.このような条件下でのVWF産生にっいて両群間で比較してみると,運動前のVWF抗原量はY群が74.9%であるのに対し、O群では101.1%と有意に高い値を示した。運動前後のVWF:Agの変化量についてはY群が34.3%、O群が26.2%と両群間で有意差はなかった。これらのことから、高齢者は若年成人に比して、安静時レベルでVWF抗原量の高いことが示唆された。
|