本研究では、分子生物学的なインスリン抵抗性および筋萎縮発症メカニズムの解明に寄与することを目的とし、平成20年度は以下の成果を得た。 糖尿病モデルラット(OLETF)を用いて、抗酸化物質としてアスタキサンチンを投与し、糖尿病発症に伴うインスリン抵抗性、筋萎縮に対する抗酸化物質摂取の効果について検討する実験を行った。LETO群(C群)、OLETF-抗酸化物質非投与対照群(D群)、OLETF-抗酸化物質投与群(A群)との3群について6週齢、12週齢、25週齢で糖負荷試験を実施した。同時に採血を行い血中インスリン濃度の測定を行い、インスリン抵抗性の評価を行った。また25週にそれぞれ下肢骨格筋を採取し、筋重量、シグナル伝達の分析を行ったところ、以下のような結果を得た。 (1)D群、A群における体重ならびに飼料摂取量には、実験期間を通して差を認めなかった。 (2)25週の糖負荷試験の空腹時血糖はC群と比較しD群において有意な上昇を認めたが、A群では有意な上昇を認めな添った。また、25週の糖負荷試験30分値の血糖も同様にD群においてのみ有意な上昇を認めた。 (3)25週の糖負荷試験30分値のインスリン値はC群と比較し、D群において有意な上昇を認めたが、A群では上昇を認めなかった。 (4)骨格筋では、C群と比較し25週のD群において下肢骨格筋の筋重量の有意な低下を認めたが、A群では低下を認めず、骨格筋Aktのリン酸化もD群においてのみ有意な発現低下を認めた。 次年度以降は、シグナル伝達系の発現解析をリアルタイム-PCR法により行う。また、酸化傷害マーカー(DNA損傷、過酸化脂質、カルボニル化およびニトロ化タンパク)および抗酸化酵素の活性および発現量を測定し、酸化ストレスに関する知見を得る
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