本研究では、分子生物学的なインスリン抵抗性および筋萎縮発症メカニズムの解明に寄与することを目的とし、平成22年度は以下の成果を得た。 [方法]昨年度に引き続き、糖尿病モデルラット(OLETF)を用いて、抗酸化物質としてアスタキサンチンを投与し、抗酸化物質摂取の効果について検討する実験を行った。LETO群(C群)、OLETF-抗酸化物質非投与対照群(D群)、OLETF-抗酸化物質投与群(A群)との3群について昨年度実施した6週齢、12週齢、25週齢、41週齢に加えて96週齢での糖負荷試験を実施した。同時に採血を行い血中インスリン濃度の測定を行い、インスリン抵抗性の評価を行った。また52週齢および98週齢でも下肢骨格筋を採取した。本年度は52週齢までの下肢骨格筋について筋重量、シグナル伝達系の分析を行った。 [結果](1)昨年度は、25週齢まではアスタキサンチン投与により、インスリン抵抗性発症が抑制され、また、筋重量の低下が抑制される結果を得た。そこで、25週齢での骨格筋におけるシグナル伝達系としてAktのリン酸化について検証した。その結果、25週齢では、インスリン抵抗性を示したD群のAktリン酸化レベルは低下していたが、A群ではC群と同様にリン酸化レベルの低下は見られなかった。52週齢ではA群のリン酸化レベルはC群に比べて低下していた。(2)98週齢ではD群の体重はC群に対して有意に減少していたが、A群では体重減少は認められなかった。また、糖負荷試験で血中インスリン濃度がA群では維持されていた。 次年度は、採取された各週齢での骨格筋試料についてAktなどのシグナル伝達系酵素の詳細な解析を実施する。また、酸化傷害マーカー(DNA損傷、過酸化脂質、カルボニル化およびニトロ化タンパク)および抗酸化酵素の活性および発現量を測定し、酸化ストレスに関する知見を得る。 なお、本年度はラットを用いて、心筋における血糖値制御に関わる新規ネットワークの解析を実施した。
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