研究概要 |
本研究では、分子生物学的なインスリン抵抗性および筋萎縮発症メカニズムの解明に寄与することを目的とし、平成23年度は以下の成果を得た。 方法:昨年度に引き続き、糖尿病モデルラット(OLETF)を用いて、抗酸化物質としてアスタキサンチンを投与し、糖尿病発症に伴うインスリン抵抗性、筋萎縮に対する抗酸化物質摂取の効果について検討する実験を行った。LETO群(C群)、OLETF-抗酸化物質非投与対照群(D群)、OLETF-抗酸化物質投与群(A群)との3群について本年度は96週齢での検体を中心として解析を進めた。 結果: 1.OLETF群の体重が著しく減少しているのに対して、OLETF+Ax群ではロントロールラット(LETO)と同程度であった。 2.糖負荷試験では、OLETF群ではインスリン分泌能力が低下しているのに対して、OLETF+Ax群では分泌能力を保持していた。 3.c-peptideの尿中排泄量はOLETF群に比べOLETF+Ax群で高値の傾向を示しているが、個体差が大きいため、詳細な検討が必要である。 4.OLETF,OLETF+Ax群はLETO群に比べてpHが低下し、アシドーシスが進行していた。また、OLETF群とOLETF+Ax群間には有意差が無かった。 5.96週齢での血漿生化学検査ではOLETF+Ax群で総コレステロール値およびLDL値がLETO群およびOLETF群に比べて高値を示した。 以上の結果から、96週齢ではOLETF群で体重が減少し、インスリン分泌能力が低下する1型糖尿病の症状が現れているのに対して、OLETF+Ax群ではインスリン分泌能力を保持していたことから、アスタキサンチン投与が2型糖尿病から1型糖尿病への進行を抑制しているものと考えられる。
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