研究概要 |
ローイング運動が高齢者の大腰筋・大腿四頭筋の筋量および筋力に及ぼす影響を明らかにするために,高齢男性ローイング愛好者(RM;n=18)と運動習慣のない健康な高齢男性(CM;n=16)において,MRI法を用いた大腰筋・大腿四頭筋の最大横断面積(CSA),および体幹屈曲力・脚伸展パワーを比較した.その結果,RMの大腰筋および大腿四頭筋のCSAは,CMよりそれぞれ62%,14%,有意に高い値を示した.除脂肪量(FFM)当りの大腰筋CSAについても,RMの方が51%高い値を示したが,FFM当りの大腿四頭筋CSAについては両者で差は見られなかった.また,CMに比べてRMの方が,体幹屈曲力は42%,脚伸展パワーは43%高い値を示した,大腰筋CSAと体幹屈曲力との間には,強い正の相関関係が認められた. 次に,高齢女性ローイング愛好者(RW:n=8)とアクティブコントロールとして高齢女性ウォーキング愛好者(WW:n=14)における大腰筋・大腿四頭筋量のCSA,および体幹屈曲力,脚伸展パワーを比較した.その結果,WWに比べてRWの大腰筋CSAは,44%有意に高い値を示し,FFM当りについても34%高い値を示した.一方,大腿四頭筋のCSAは両者で差が認められなかった.体幹屈曲力については,RWの方がWWより35%有意に高い値を示したが,脚伸展パワーは両者で差が認められなかった.また,大腰筋CSAと体幹屈曲力の間には強い正の相関関係が認められた. 以上の研究より,習慣的なローイング運動はウォーキング運動と同レベルに大腿四頭筋量および筋力を維持し,特に,高齢ローイング愛好者の大腰筋量および筋力は非常に高くなっていたことから,習慣的なローイング運動は,高齢者において,加齢に伴う大腰筋の筋量および筋力の低下を特異的に抑制できる運動様式である可能性が示唆された.
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