本研究は、ローイング運動が高齢者の大腰筋・大腿四頭筋の筋量および筋力に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。昨年度は、ローイング愛好者と運動習慣のない健康な高齢者を対象に、高齢ローイング愛好者の大腰筋・大腿四頭筋が著しく大きいことを明らかにした。 今年度は、65~78歳の運動習慣のない健康な高齢者(n=18)を対象として、6ヶ月間のローイングトレーニングを実施し、ローイング運動の大腰筋・大腿四頭筋の筋量増加効果を検討した。対象者は、何も運動を行わないコントロール群(n=9)と、ローイングトレーニングを行うトレーニング群(n=9)に群分けした。トレーニング群は、ローイング・エルゴメータを用いて、週3回、1回30分のトレーニングを6ヶ月間行い、運動強度は65~80%HRmaxに設定した。ベースラインの測定において、年齢、身長、体重、体脂肪率、大腰筋筋断面積、大腿四頭筋筋断面積のすべての項目において、両群で差は見られなかった。また、コントロール群においては、ベースラインとトレーニング後の測定において、大腿四頭筋筋断面積を除くすべての項目で、変化は見られなかった。一方、トレーニング群においては、身長、体重、体脂肪率にはトレーニング後で変化は認められなかったが、大腰筋筋断面積は、6ヶ月間のトレーニング後で、23%有意に増加した。また、大腿四頭筋においても、6ヶ月間のトレーニングによって8.6%増加し、変化率においてコントロール群と比較して増加傾向が認められた(p=0.080)。 以上の結果より、運動習慣のない高齢者において、6ヶ月間のローイングトレーニングは、とりわけ体幹部に位置し、姿勢保持や歩行能力に関連する大腰筋の筋量を増加させ、加齢に伴う筋量低下を抑制できる有用な運動様式であることが明らかとなった。
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