研究概要 |
生活習慣病における運動と食事指導の効果を酸化ストレスの変化から検討するのが本研究の目的であるが20年度は運動の効果を検討した。研究の背景:1)運動習慣は心血管病予防の重要な因子である。2)酸化ストレスは生活習慣病の病態および動脈硬化の進展に深く関与している。3)健常者および心疾患患者において、運動は酸化ストレスを改善する。4)生体内の酸化ストレスはフリーラジカルレベルと抗酸化能の不均衡によるが、有酸素運動の効果をその両面から検討した研究は十分ではない。目的:生活習慣病患者において、有酸素運動によるトレーニングが血中フリーラジカルレベルおよび抗酸化能におよぼす効果を検討する。対象:運動習慣のない生活習慣病患者:25名(Training群:18名Non-training群:7名)方法:運動トレーニング(50%VO2max強度)1回30分以上、週3回以上を12週間行い、その前後で採血および最大酸素摂取量の推定(簡易法)を行った。酸化ストレスの測定方法:Free Radical Analytical System (Diacron社製)を用い、d-ROMs (Reactive Oxygen Metabolites) testでフリーラジカルレベル、BAP (Biological Antioxidant Potential) testで抗酸化能を測定し、dROMs/BAPを酸化ストレスの指標とした。検査項目:既往歴、治療・服薬状況、BMI、血圧、d-ROM, BAP, Malondialdehyde LDL、HDLコレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪、尿酸、血糖、HbAlc、最大酸素摂取量(間接法)結果のまとめ:12週間の50%VO2max相当のトレーニングにより1)フリーラジカルレベルに有意な変化は認めなかったが、抗酸化能は増加した。その結果、酸化ストレスは有意に低下した。2)安静時の血中酸化LDLは低下傾向を示した。3)酸化ストレスは推定最大酸素摂取量と有意な負の相関を示した。 結語:生活習慣病患者において、12週間の有酸素運動は抗酸化能を増加させることにより、酸化ストレスを低下させることが示唆された。
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