目的:勤労者におけるメンタルヘルスとメタボリックシンドローム(以下「MetS」という)との関連性を脳由来神経栄養因子(BDNF)の役割も含めて検証することを目的する。 研究方法:C企業社員20歳以上の約400人を対象とし、平成21年1月~平成23年2月の間に行われた健康診査(年1回)時に、(1)基礎プロフィール(2)血液一般検査(3)インスリン濃度HOMA-R(4)血清アディポネクチン、(5)血清BDNF検査、血中コルチゾール検査、(6)メンタル検査:CES-D、睡眠調査、GHQ心理検査(初回年度のみ)、職業性簡易ストレス尺度検査等を実施した。 結果:初年度においては347人、2年目381人、最終年度371人の参加者数であった。初年度におけるMSリスク因子を2つ以上持つものは、これまでの研究成果と同様、男性で37.6%、女性6%、HOMA-R、血清BDNFレベル、血清アディポネクチンレベルに顕著な男女差が認められた。また、MetSとメンタルヘルスとの関連性において、睡眠障害とMetS因子数2つ以上は双方に約2倍リスクであることが観察され、MetSと睡眠障害の関連性が示唆された。また、女性は男性に比較して血清BDNFが有意に低い傾向が観察された。さらに、女性の血清BDNFは、PSQIスコアと弱い正の相関関係(p<0.01)が認めら。さらに、女性の睡眠障害のある者がない者に比較して、血清BDNFが有意に低かった(p<0.001)。さらに、女性の低血清BDNFレベルは高レベルに比較して、年齢、うつ傾向を調整した睡眠障害のリスクは、4.18(95%CI:1.88-9.31)が観察された。一方、男性には有意な差は認められなかった。2年目も初年度と全体の傾向は殆ど変化がなかった。 結論:最終年度における詳細な結果については分析中(健康診査、検査終了が年度末になるため)であるため、最終的な結論には至っていないが、MetSと睡眠障害、睡眠障害と血清BDNFとの関連性が示唆された。特に、女性においては男性より血清BDNFが低い傾向があり、睡眠障害において低血清BDNFのリスクが高い。今回の研究結果は、睡眠障害の有病率の性差に関連があるかもしれない。
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