<目的>運動神経終末や骨格筋は特異的にその形態を変化させ、シナプス部である神経筋接合部(NMJ)の形態も特異的に変化する。神経筋相互作用に関して、神経系の調節性、骨格筋筋線維の調節性の多くが明らかにされているが、筋活動が如何にしてシナプス形成を調節するのか、除神経筋に対する神経再接合を何が調節するのか、は明らかにされていない。一方、筋損傷およびNMJ構造が再生する過程では、サイトカインとして神経成長因子等が神経細胞の発生、分化、再生に働くことが明らかにされている。これらが、運動によって増加した場合、速やかな神経筋再接合、筋機能回復が予測される。そこで本研究では、神経筋再接合の再形成機序について、筋活動によって何らかの情報(mRNA、神経栄養因子、神経成長因子)を運動神経に発信するといった筋原性調節が起こるか否かを検討してきた。今年度は老化に伴うNMJ形態変化と筋活動の関係について検討した。<方法>今回は加齢変化をみるために老化促進マウス(SAM)を用い、SAM群(A)とSAM+トレーニング群(ST)を設けた。トレーニングは自発性走運動を行わせた.生後54週齢時に、筋発揮張力を測定した。凍結切片を作成し、ATPase染色を行った。また、神経終末の形態変化を光学顕微鏡より観察した。老化、筋活動によるNMJ形態の変化と機能的特性について検討した。<結果および考察>最大張力においてST群はA群より高値を示した。NMJ形態では、A群では加齢時にみられる形態特徴が観察されたが、ST群では観察されなかった。しかし、除神経は認められず、多重神経支配によるタイプグルーピングなどの像は観察されなかった。また、筋線維タイプ別構成比においては、2群間の差は認められなかった。加齢初期においては、運動により神経終末形態の老化が抑制する傾向があり、筋発揮張力に影響を及ぼしていることが示唆された。
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