研究概要 |
老化の原因の1つとして酸化ストレスが関与していると考えられている。老化における病態として代表的なものに筋肉減少症があり、高齢者の運動機能低下を引き起こしており、酸化ストレスの関与が示唆されている。我々は,骨格筋における長期的な活性酸素傷害の影響を解析するために、活性酸素の主要な発生源であるミトコンドリアの基質に局在するMn-SODをCre-loxpシステムを用いて骨格筋特異的に欠損させ,骨格筋特異的Mn-SOD欠損マウスを作製した。骨格筋特異的Mn-SOD欠損マウスの腓腹筋では筋繊維の再生マーカーである核が中心に移行するcentralized nucleiが観察できた。また筋傷害マーカーである血清CPK活性の上昇が認められた。骨格筋の萎縮を調べるため筋重量を測定したところ若齢マウスだけでなく老齢(30ヶ月齢)マウスにも対照マウスと比較して筋萎縮は認められなかった。一方、トレッドミル試験における強制運動量は著しい低下が認められた。また、呼吸鎖複合体IIの顕著な活性低下も認められたが、呼吸鎖複合体IVの活性は維持されていた。以上の結果から骨格筋特異的Mn-SOD欠損マウスはミトコンドリア由来の活性酸素により呼吸鎖複合体IIの活性が選択的に低下し、運動機能が著しく低下することが明らかになった。一方、骨格筋萎縮は老齢時にも認められず、筋繊維の再生能が高齢期にも保たれていることが示唆された。抗酸化剤による運動機能レスキューを試みるために、SOD/カタラーゼ活性を有するサレン-マンガン錯体EUK-8を腹腔内単回投与した。その結果、24時間後に著しく強制走行時間が延長した。
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