肥満に随伴する代謝異常が大腸発がん感受性に及ぼす影響を、代謝関連キナーゼSnarkをコードする遺伝子を破壊したマウス(Snarkノックアウトマウス)をモデルとして検証し、有効ながん予防法の開発につながる生物学的特性の探索を目的とした。通常飼育条件では加齢に伴う肥満を呈するSnarkノックアウトマウスにおいて、全身の脂肪蓄積に先立って弱齢時より基礎代謝の低下を示唆する低体温と高脂血症が生じていることが明らかになった。また代謝関連サイトカイン群のうち、脂質代謝の促進と基礎代謝の亢進を誘導することが報告されているIL-6の血中濃度が弱齢時より特異的に低下していることも示された。自発運動の付加によりSnarkノックアウトマウスの肥満と代謝異常の改善が認められたが、このとき同時にIL-6濃度も正常化していた。またIL-6投与により基礎体温の正常化と高脂血症の改善も認めたことから、Snarkノックアウトマウスにおける代謝異常はIL-6の基礎量の低下が原因である可能性が強く示唆された。一方、Snarkノックアウトマウスで亢進していた化学大腸発がん感受性は自発運動により有意に低下した。同様の発がん感受性の低下はIL-6投与によってももたらされたことから、IL-6の基礎量を維持することが発がんリスクの低下にも寄与することが示唆された。これらの結果は生活習慣の改善による有効ながん予防法を開発するうえでの生物学的基盤のとして活用できるものと期待された。
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