本研究の目的は、国際的制度化が進行中の「持続可能な開発のための教育」(ESD)への生活科学からのアプローチとして、「生活の安全保障」概念を提示することによって次の2点の貢献を果たすことにある。第一に、主として途上国における「持続可能な開発のための教育」戦略に対して、日本における「開発」経験の背景にあった「生活の安全保障」に関する知見を示すことである。具体的には、日本が高度経済成長を遂げた根底にあった生活改良普及事業や生活改善運動、戦後の生活文化運動等の功績とともに、女子教育(家庭科)や生活者運動などの歴史を整理することによって、「生活の安全保障」に必要な条件を探り、特に途上国での「持続可能な開発のための教育」戦略への貢献をはかることである。第二に、日本で進行中の「持続可能な開発のための教育」実践への貢献として、環境先進国における事例を「生活の安全保障」の側面から検討し、そこで得られた知見から、日本における実践に欠けている課題を明らかにすることである。
|