研究課題
研究代表者・徳井は、近代以降の西洋服飾史が女性服の男性服への越境の歴史として捉えられるが、近代以前を視野に入れれば、女性服の男性服への越境として歴史を捉えることはできないことを示した。また近代社会で女性性を刻印された要素には以後、男性性の侵犯はなく、一方で男性性を刻印された要素には女性性の侵犯があり、これが女性服の男性服への越境という歴史観を生んでいることを明らかにした。研究分担者・小山は、近代日本の服装変容とジェンダー感性との生成過程の連関を明らかにした。近代西洋の紳士服が国粋的・天皇主義的な枠組に絡んで普及した事象、明治20年代から40年代の女性服の改良案が、上下二部形式という服飾形態を西洋風と日本の古代風という二つの意想をもって辻褄合わせのように利用した事象を取り上げ、国家的要請や知的階級の提案と密なる関連をもって服装の格差が生じる構造を明らかにした。研究分担者・西浦は、18世紀フランスにおけるアングロマニー(イギリス心酔)の服飾流行から、当時のジェンダー観について、諷刺、批判文、ファッション・プレート等を手がかりに考察した。簡素化・男性化をキーワードとして語られる流行の変化には、英仏という国家・民族間の性格の相違や、階級・身分に関する意識が複雑に絡み合っており、こうした意識がアンシャン・レジーム期の社会におけるジェンダー観の大きな特徴となっていることを明らかにした。研究分担者・新實は、19世紀前半のフランスの小説・戯曲において女主人公の異性装について表象分析を行い、異性装が象徴するものを明確化することにより各作家の女性性や性別二元論に対する意識を明らかにした。また同時代の社会思想家による服装改革および女性運動から、身体意識や身体観を探り、性差の観念の発生要因を社会・文化的背景の中で解明した。
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電子情報通信学会第2回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIM2010)論文集
ページ: A2-5、6
LNCS5982, DASFAA2010 Proceedings
巻: Part II, Springer ページ: 412-15