本研究では、最近4年以内にセルフコーディネート型住戸および育児支援型集合住宅に入居した家族の生活実態を把握し、新しい生活空間の利用による家族の生活変容を明らかにするとともに、特に、共有スペースの使われ方やその変化などの利用実態を把握し、地域の人間関係が構築されていく過程について検討した。調査対象として、昨年度に引き続き香川県高松市に位置する育児支援型の分譲マンションに注目して、共有スペースの利用状況について定点観察調査を実施するとともに、昨年度の事例調査対象世帯について引き続き面接調査を行った。その結果、共有スペースの使い方では、棟内イベントなどによる利用を契機として定期的に使用する人が増加したが、「子どもだけ」か「母と子で」の利用が多くを占め、新たな人間関係の構築に至った明確なケースは見られなかった。しかし、住戸内では一緒に遊ばないが共有スペースでは一緒というきょうだいや、土日における父子の利用、共有スペースにおける親同士の交流が生じるなどの点が確認された。即ち、共有スペースが家族のコミュニケーション場面の一部となっており、入居前とは異なる関わり方が発現していること、棟内を中心とする近隣関係を築く貴重な機会となりっっあること、子どもの異年齢や他グループとの交流・親世代にとっても棟内の他世帯との交流が生じはじめていることが明らかにされた。今後、これらが新しい人間関係として定着していくのか検証する必要があるため、次年度の研究課題に加えるとともに、さらに地域社会との関係に拡大する可能性があるのか検討していきたいと考える。
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