本研究は、無文字社会に生きるタイ北部山地民(カレン族)女性らを自立支援するとの立場から、女性らが手に職を付けるための「伝統染織技術教育指導プログラム」を開発し普及させることを目的としている。 1) 21年度は、初年度に作成した「染織技術教育指導プログラム」(以下「指導プログラム」)を精選し、タイ北部チェンマイ県ドーイサケット郡P村のカレン族女性を対象として試験的な使用を開始した。 2) また、カレン族女性ら(12~18歳の106名)を対象として「指導プログラム」で取り扱っている技術項目のうち34項目の技術を精選し、これらの教育指導の順次性を検討した。方法:対象者106名の34技術項目の習得の有無を手がかりにして、項目反応理論(IRT : Item Response Theory)により困難度bと識別力a、技術項目ごとの平均習得年齢を求め、これらの情報から技術項目の指導の最適時期を探索した。つまり、aとb、技術項目ごとの平均習得年齢μとその標準偏差σを求めた。次いでμに対するa、bおよびσを2次元座標上に布置し、無差別曲線(indifference curve)を仮定してその分布を検討したところ、明確に最適化問題を解く手がかりを得ることが出来た。これにより、年齢に適した技術項目の指導順序に関する有力な情報(どの技術項目をいつ、どんな順序で習得していくのがよいか)をつかんだ。なおこの研究方法は同種の技術指導や伝承に関する最適化問題に応用可能と考える。
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