研究概要 |
本研究の初年度には、タイ北部山地民・カレン族の染織技術「指導プログラム」を作製した。プログラムの順次性は、統計的な手法である項目反応理論(IRT:Item Response Theory)により推定された困難度(β)と識別力(α)によるものであって、染織技術(148項目)を易しい技術から難しい技術へという順番で指導できるように体系化されている。二年度目には、IRTによる困難度(β)と識別力(α)に、「平均習得年齢(μ)」という変数を加えてさらに解析を行い、各染織技術の最適な指導・習得年齢を明らかにして、その情報を「指導プログラム」に加えた。 そこで、最終年度となる本年度は、精選した「指導プログラム」の効果と妥当性、学校教育カリキュラムにおける普及について検討するために、2010年5月から10月までの期間(一週に付き3時間)の実験授業を行った。授業実施にあたっては、タイ北部チェンマイ県ドーイサケット郡F行政区P学校長、カレン族児童生徒(24人)、授業の指導者としてカレン女性R氏の協力を得た。 「指導プログラム」を用いた授業の前後において、技術習得の状況調査を行った。児童生徒らを対象として、プログラムに収録されている染織技術(148項目)をどの程度習得しているかを4段階評価により調査した。また、授業において各自が製作した作品を収集して、これを評価した。得られたデータを数量化して計量的に解析し、精選した「指導プログラム」の効果と妥当性を確認し、次いで学校教育カリキュラム化による普及について、学校関係者、職業訓練所、現地NGO・政府産業省・教育関係者らと協議、検討した。研究成果の一部は"Optimization problems of appropriate age for learning cloth making,using Item Response Theory analysis of ability to discriminate,level of difficulty,and average age of skill acquisition,Shimoda,A.,Ohsawa,S.,Ohkubo,T.,Japan Journal of Human Growth and Development Research,51(in press),2010"としてまとめた。
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