目的:本研究の主たる目的は、乳幼児(0. 1. 2歳児)への絵本の読み聞かせにおいて、A「コミュニケーション開発型絵本」が、乳幼児にどのようなコミュニケーション能力を開発するかを、伝統的なB「知識カタログ型絵本」との比較において検討する。 研究対象:恵庭市(北海道)・岡山市(岡山)・鳴門市(徳島)の3地域から、約20名の0. 1. 2歳児をもつ母親を選抜し、こちらから貸与した「A型絵本」10冊、「B型絵本」10冊が、どのように読まれたかの詳細な記録を収集した。 研究成果:本研究において「A型絵本」として選抜した、長新太・元永定正らの創作による豊かな日本語のオノマトペと抽象的な絵やナンセンスが融合した赤ちゃん絵本は、伝統的な「B型絵本」と比較して明らかに、親子の間で多様な前言語的コミュケーションを数多く発生させた。リズミカルなオノマトペの絵本を読んでもらうことで、表情・ジェスチュアー・声の調子・まなざしを通して「やったりとったり」が頻繁に発生し、乳幼児自らがコミュニケーションの場でリーダーシップを取ろうとするケースもあった。言葉が生み出される前に、このような「A型絵本」の読み合いを通して生まれる多様なコミュニケーションの成立は、親の方にも驚きと感動をもたらし数多くの「赤ちゃん発見」の記録が寄せられた。また、乳幼児は、日常的にお話を聞いたり絵本を読み聞かせてもらう習慣があると、1歳過ぎ頃から自分でも赤ちゃん語(baby jargon)を使って読み始める。この研究成果は、30分のDVDに編集しドイツにおける国際会議(2009年3月21日)で発表された。
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