研究概要 |
洗浄機構における汚れの除去機構を考える場合,洗浄液中の界面活性剤や洗浄補助剤による界面化学作用とともに,外部から被洗物に与えちれる物理作用も重要である.本研究は,物理作用のひとつである洗浄液の持つ流体力に着目したもので,特に界面活性剤水溶液の流動特性を解明し,流体力学的にも水より汚れ除去に有効である手がかりを得ることを目的としている. まず,流れ挙動の特性を探る実験として,各種流体が布モデルであるメッシュ間隙を通過する際に生じる抗力を通過前後の圧力損失を測定して算出し比較検討した.これにより,球状ミセルを形成する界面活性剤水溶液の抗力は,水に比べて低く,希薄高分子水溶液より高かった.この原因を探るために,対象とした流体の物性のひをつである粘度をレオメータを用いそ様々な条件下で測定した.その結果,粘性が最も低かったのは水で,界面活性剤水溶液は非常にわずかだがすべての条件下で水より高い粘性を有していた.以上のように,抗力と粘性の結果が一致しないことから,抗力には粘性以外の要因が関わっていることが示唆された.一方で希薄高分子水溶液は抗力,粘性とも水より高く,両者が関係している可能性も示唆され,抗力には複雑な要因が同時に影響していると推測された.また,実験値を様々なパラメータを用いて解析した結果,流体がメッシュに当たって通過する流れに関しては,メッシュを構成する糸(障害物)まわりの流れではなく,多数の空間内部を通る流れとみなして計算する方が,この流れの解釈にはより適切であることがわかった. さらに,本年度は粘性測定の条件を様々に変化させて行い粘性に影響を与える要因を探った結果,濃度,温度の依存性が最も大きいことがわかった.このことから,各種溶液の流れが洗浄性能に及ぼす影響として,粘性は無視できない要因であることが示唆された.
|