研究概要 |
本研究は被服圧の内,人体を締め上げた時に発生するフープテンション(周応力)が,人体に与える負の影響を除くための,2つの客観的指標の確立を目指している.その一つは人体の体部位全体を網羅する圧の適正範囲を明らかにすることであり,二つ目は誰もが手軽に被服圧を測定できる簡易被服圧測定器を開発することである.本年度は以下に示す研究IとIIを実施した。 研究I:一般者向けに丈夫な非伸縮性の受圧部を開発しているが,硬質ポリエチレン製の薄膜が扱いにくく,材質を含め再検討している.現在選定している小型圧トランスデューサーが高価であるため,安価なものを探して,一般向けに使用できる安価な測定器の実現をさらに目指している.信号増幅器は小型化に成功したので,乾電池を用いたハンディタイプの簡易被服圧測定器の後半部分は出来上がった. 研究II:特にフープテンションの発生する着装部位(頭部:帽子やハチマキの位置,頸部:ネクタイを締める位置,胸囲:乳房の上・下,乳頭を通る位置,腹囲:ハイウエスト,ウエスト,ローウエスト,臀囲,鼠蹊部・大腿・下腿・膝・足首・肩・上腕・前腕・肘・手首・指の周囲)を,幅2.5cmのインサイドベルトと,ゴムベルトを用いて圧迫したところ,フープテンションに鋭敏な部位とそうでない部位があることが明らかとなった。また,圧迫による皮下組織の変化を調べる前実験として,超音波診断装置を用いて,皮下脂肪・筋の厚さの変化を現在腹部と脚部において調べているところである.なお,圧迫刺激は皮膚温に影響を及ぼすが,本年度はまず圧迫刺激によらない皮膚温の変化に影響を与える諸因子について,明らかにすることができた.来年度以降,これらの影響を踏まえた上でフープテンションが人体に及ぼす許容範囲を明らかにするつもりである.
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