研究概要 |
本研究は,特色ある地域の景観と,その景観を構成する要素(アーバンエレメントや生活エレメント等の人工物エレメント)のデザインとの関係性を感性価値の視点から明らかにし,景観構成要素が地域景観および地域ブランド構築に果たす役割と効果を明らかにすることを目的とし,特色ある地域景観の創造のためのエレメントデザインの指針を導くことを試みたものである。これまでの経過として,景観評価に関する文献を収集し,テキストマイニングの手法を応用して景観の持つ感性価値について調査したところ,楽しさ・審美性・歴史性などといった,合計12種類の感性価値を抽出することができ,この結果からに景観に対する評価基軸を作成した。また,同調査にて,景観の感性価値を形成しているとみられる要素(感性価値形成要素)として,道路形状・植物・建築物(建築ファサード)など,合計11種類の要素を抽出した。なお,この感性価値形成要素には,景観内に確認できる要素,つまりは景観を物理的または現象的に構成している景観構成要素の他に,評価者(観測者)が当該地域に対して持つ先入観やイメージ,知識や訪問経験などといった景観内には確認できない要素が存在すると考えられた。次に,西日本における政令指定都市のうち,名古屋市,京都市,大阪市,神戸市,広島市の5都市をケーススタディ地域として選定し,それぞれの都市における各種の政策等によってシンボルロードと位置付けられている6つの街路を実態調査の対象に選定した。そして,調査対象として選定した各街路へ赴き,それぞれの景観構成要素および周辺地域等の現況調査を行い,その結果をまとめたところ,整備時期や地区計画等の違いによって,同じ街路でも構成要素が大きく異なる場面(景観シーン)が多数確認された。最後に,これらの事態調査の結果から,街路景観の評価対象として合計18の景観シーンを選定した。
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