研究概要 |
今年度は、外衣用不織布にとって必要である伸縮性を改善するために、捲縮レーヨンを用いた複合不織布を試作し、その細孔構造、力学的性質、吸水性等を調べるとともに、形態安定性の重要な因子であるバギング性について調べた。即ち、捲縮レーヨンと普通レーヨンとの混合比を変化させたウエブと、3種類のシート(綿スパンレース不織布、ポリエステルスパンボンド不織布とポリプロピレンスパンボンド不織布)を水流交絡法で複合化し、その複合不織布の構造や物理的性能について実験的に調べた。これらの実験により次のような結果が得られた。(1)引張試験の引張強度(タテ方向)では、ポリプロピレンシートで、ウェブとの混合比が等しい場合に、捲縮レーヨンを用いた方が引っ張り強くなった。また、引張伸度では、捲縮レーヨンとポリエステルシートを複合した方が伸びやすくなる可能性があると考えられる。(2)吸水性試験では、ほとんどの場合でレーヨンの方が、吸水率が高い結果となった。ポリプロピレンと複合化した場合、ウェブの混合比が大きい試料ほど吸水率が高くなった。これは、吸水性に関して、レーヨンが主導的な役割を果たしていることを意味し、特に複合相手がポリプロピレンかポリエステルの場合に顕著であることを示している。(4)細孔径分布試験では、捲縮レーヨンの試料において、孔径が大きくなる傾向が見られた。これは、通気性の結果とも関連している。また、複合相手のシート別に見ると、ポリエステルシートを用いた試料は、孔径が非常に小さく密であり、従って通気度も低い値になったと考えられる。(5)ドレープ試験では、捲縮の有無による大きな差は見られなかった。しかし、ウェブの混合比の小さい試料においてはドレープ係数が大きく、硬い試料であることが分かった。(6)バギング試験では、IG値(瞬間残留変形値),ID値(残留変形値)ともに、ポリプロピレンシートを複合した試料において、ウェブの混合率が少ないほど変形値が小さくなった。以上の事から、複合不織布を作成するにあたって、複合化するシートの性質によって、複合不織布の物理的特性が大きく影響され、複合化においては何と複合化するか、また、その混合の適切な割合の決定が捲縮レーヨンの特性を生かすために重要であることが分かった。
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