第一に、濃青色色素生成細菌の色素生成条件を検討した。すなわち、本菌の色素生成に最適な培地条件を各種のタンパク源、炭素源、さらに水素イオン濃度について調べた結果、Trypticase soy brothをタンパク源、ブドウ糖を炭素源とし、pH5.6に調整した寒天平板培地が最適であった。さらにグリセリンを加えることによって色素の安定性が増加することが明らかどなった。このようにして、本色素生成に最適な培地条件が確立した。 第二に、色素生成量は寒天平板の色調変化を色彩色差計によって測定する方法の方が寒天培地から色素を抽出してその吸光度を測定する手法よりも非常に迅速で簡便に定量できることが判明した。以後この測定法で生成量を測定した。 第三に、対象微生物の同定を行い、その性状を解析した。すなわち、グラム染色試験を行い、各種生化学的性状を調べ、さらに遺伝子解析を行った結果から、本菌はPantoea agglomeransと同定された。この菌種で青色色素を生成する菌株はまだ報告がなく、本研究株はこれまでにない新たな変異株であることが明らかとなった。また、本株は増殖に酸素が必要であり、10度以下の低温でも増殖できる低温細菌であった。 第四に、本色素の物性を検討した。すなわち、本色素を培養した培地からアセトンで抽出し、細胞を除去した試料を作成した。その吸収スペクトルを測定した結果、570nm付近で最大吸収が認められた。また、各種溶媒への溶解性を調べた結果、本色素は水溶性であった。これらの結果から、本色素はこれまで報告例のない、新しい青紫色素であることが明らかとなった。
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