研究概要 |
21年度は,澱粉を主成分とする食品である小麦粉を試料として,「配合された油脂」の「食品に内在している澱粉との成分間反応・構造構築」および「食品に内在している脂質の質的変化」への影響を検討した。小麦粉,全卵,バターからドーナツを調製,生地およびドーナツに含まれる小麦粉(澱粉)と脂質の結合の強さにより脂質を分画した。すなわち,生地と強く結合していない脂質はBligh&Dyer法で,澱粉と強く結合している脂質はBligh&Dyer法抽出残渣を水飽和ブタノール法(WSB法)で抽出することで得た。澱粉に強く結合している脂質には小麦粉に内在しているアミロース脂質複合体(Starch Lipid)も含まれる。これらの脂肪酸(TG)分析,リン脂質種分析,コレステロール分析を行うことで,脂質由来を把握した。なお,全卵に代えて,卵黄,卵白を配合したもの,これらを配合しなかったものも調製,分析した。その結果,配合した卵黄,バターに由来する脂質および揚げ加熱中に吸着した揚げ油は,Bligh&Dyer法で抽出され,澱粉と強く結合しないことが示された。また,Starch Lipid (LPC, LPE)は揚げ加熱中に減少し,揚げ油中に溶出あるいはBligh&Dyer法抽出画分に抽出された。これらの結果に全卵,卵黄,卵白の配合の有無は影響しなかったが,揚げ油の吸着量には卵白の有無が関与していた。方,生地の加熱過程での熱的変化を示唆走査熱量計で測定した結果,2つの糊化ピーク(ピークI,II)およびアミロース脂質複合体解離ピーク(ピークIII)が認められ,卵黄配合によりピークII,IIIが小さくなり,卵白配合によりピークIIIは大きくなり,卵が糊化およびアミロース脂質複合体解離に影響を及ぼすことが示唆された。なお,20年度に上層と下層では内部構造が異なることを確認した生クリームと卵黄が多く配合されたプディングにおいて,上層と下層で脂肪,コレステロール,リン脂質がわずかに異なる分布をしていることも冷却遠心分離による分画で明らかとした。
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