研究概要 |
22年度は,21年度にひきつづき,「配合された油脂」の「食品に内在している澱粉との成分間反応・構造構築」および「食品に内在している脂質の質的変化」への影響をドーナツ生地を試料として,配合される卵の役割を明らかにすることを目的とした。具体的には,Bligh-Dyer法で揚げ加熱後の脂肪量の測定を行うとともに,生地の動的粘弾性測定をペルチェ式温度コントロールシステムを有するストレス制御動的粘弾性測定装置RS6000(Thermo-HAAKE, Germany)を用い,貯蔵弾性率G'および損失弾性率G"の応力依存性,周波数依存性,温度依存性測定を行った。その結果,全卵あるいは卵白を配合した生地で揚げ油の吸着が少なく,卵黄を配合した生地あるいは卵を配合していない生地で揚げ油の吸着が多かった。動的粘弾性測定における生地の温度依存性では,卵黄を配合した生地では糊化が抑制され糊化開始温度が上昇していること,卵白を配合した生地で100℃付近のG',G"が他の生地よりも高いことが認められた。また,応力依存性測定の結果から,卵白を配合することでG'は上昇し,卵黄を配合することでG',G"の上昇が抑制された。さらに,周波数依存測定の結果,卵黄を配合した生地では温度変化によるG',G"の変化が小さく,また,G'とG"のプロットが20,60,75,90℃でほぼ同一線上となった。これらのことから加熱過程において,卵白は生地を硬化させて揚げ油の吸着を抑制すること,卵黄は生地の粘弾性を維持することが推察された。今後は卵黄あるいは卵白の加熱による変化と調理特性について詳細に検討する必要があると考えられた。
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