研究概要 |
本年度は、タクアン用の品種である"干し理想"を用いて塩蔵ダイコンを試作し、経時的な成分解析を行った。昨年度と同様に、塩押し、日干しによる脱水を行い、塩蔵ダイコンを試作した。呈味性および機能性に関わるアミノ酸、糖、有機酸、脂肪酸、そして黄変化に関わるダイコン辛味成分関連化合物について1年以上の長期塩蔵下での経時的分析を実施し,脱水方法の差による影響,塩蔵中の消長について解析を行った。その結果、昨年度の研究により明らかになった干すことによる成分の蓄積効果は、コハク酸、ショ糖では確認されず、プロリン以外にγ-アミノ酪酸(GABA)の蓄積効果が見いだされた。脱水条件による成分変化においては品種の違いは重要な因子であり、特にGABAは血圧降下機能等の食品機能が知られているため、次年度以降の研究において、検討を重ねる必要があると考えられた。また、長期塩蔵における経時的な分析結果から、各種成分含量は1ヶ月で最大になり、その後の熟成に伴う変化は小さい、もしくは緩やかな減少傾向にあった。また、昨年同様、遊離脂肪酸や有機酸のピログルタミン酸の増大が確認された。他方、塩蔵ダイコンの黄変化について、漬込み初期の低温下では着色物質の生成はほとんど認められず、貯蔵温度(20℃)が高くなるにつれ、ダイコンは鮮黄色に変化し、その生成と増大が確認され、8~12ヶ月間の貯蔵で色素生成は最大になった。塩蔵過程における色素発現は、微生物発酵というよりは主として貯蔵温度に依存する非酵素的な化学反応であることを明らかにした。さらに,鮮黄色塩蔵ダイコンの光退色防止並びに白色化については、光源の照射波長の制御を行うことにより実現可能である事実を見いだし、これまでの製造現場における黄変化に関わる諸問題を解決する糸口さらには実用化まで踏み込んだ成果を得ることができた。
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