本年度は、前年度と同様に塩蔵ダイコンを試作し、経時的な分光測色計(CIELAB)による色調解析ならびに黄色色素関連化合物のHPLC解析を行った。また、前年度明らかにした波長制御による退色防止の知見をもとに、本年度はLED光源を用いた光淡色化試験を行った。ダイコンは塩押しならびに日干しによる脱水を行った後、低塩並びに高塩条件下で温度管理しながら8ヶ月間塩蔵させた。漬込み初期の2ヶ月間(4℃)では、全ての塩蔵ダイコンはわずかに着色するのみで、HPLC分析において色素前駆体は生成していたが、黄色物質の生成はほとんど認められなかった。高塩蔵ダイコンについて10℃(2-4ヶ月)、20℃(4ヶ月以降)と貯蔵温度を上昇させたところ、干し塩蔵ダイコンにおいて顕著にあらわれた。黄色を示すb^*値が6ヶ月後で最も高く、その後は明るさを示すL^*値の低下と赤色を示すa^*値の上昇とともに濃色化が始まった。HPLC分析の結果も同様に、黄色色素生成量が増大し、色相角度(h°)との高い相関を示した。以上のことから、塩蔵過程における前駆体から黄色色素への変換は温度に依存し、それに伴う色調の変化との相関を明らかにすることができた。 鮮黄色化したダイコンの光淡色化試験については、窒素充填包装と青色もしくは白色LEDを組み合わせることで実現可能である事実を見いだした。品質に関わる脂肪酸、アミノ酸、有機酸、遊離糖への影響については、不飽和脂肪酸の減少が見られたが、他の成分への影響はほとんどなかった。脂肪酸については、窒素充填することで、光による酸化促進を抑制することができた。 以上の結果より、これまでの製造現場における黄変化に関わる諸問題を解決する糸口さらには実用化まで踏み込んだ成果を得ることができた。
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