我が国はすでに高齢化社会から高齢社会となり、2020年には高齢者の割合が29.3%と推定されている。このような社会においては、高齢者が元気で活力を保ち自立する事が、高齢者自身にとっても社会にとっても非常に重要な事である。高齢者は多かれ少なかれ若年者にくらべると、身体的機能が低下しており、それまでは問題にならなかった食物が食べにくい食物となる場合がしばしばある。そこで、高齢者の口腔内状態を測定し、適切な食べ物を提供することが重要になる。そのためには、先ず一人一人の口腔内状態を測定する必要がある。これまで、申請者らは、デンタルプレスケールを用いて咬合圧、咬合面積などの咀嚼力に関するデータを測定してきたが、より簡便に測定するために、グルコースを含む、寒天(寒天濃度1、および2%ゲル)とでんぷん(上新粉および、上新粉+片栗粉)を用いた検査食を開発した。これらの検査食を若年者と高齢者のボランティアに咀嚼してもらい、グルコース溶出量から咀嚼力を測定した。これまでの評価方法との関連を確かめ、同時に、加熱野菜に対する、高齢者の食べやすさの応答、咀嚼時間、咀嚼回数との関係をしらべた。その結果、4種の検査食を用いて、高齢者の口腔内の状態を表すと同時に高齢者の口腔内状態を3段階に分類することができた。これを用いれば、高齢者の一人一人に適切な食物の調理法を提案できると考える。
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