高齢者の口腔内状態をより簡便に評価するために、日常の食品に近い検査食を用いる方法を検討した。検査食を高齢者に一定時間咀嚼してもらい、それを吐き出して、咀嚼後の粒度分布を調べることにより、口腔内状態を知ろうとしたものである。咀嚼力が十分あれば、細かく砕くことが出来るので、粒度は小さくなる。このためには寒天ゲルを用いることによって達成できた。 一方、咀嚼時には舌や頬で食品を移動させながら、上下の歯で食品を噛んで食品全体を細かくしている。高齢者は一般にこの舌と頬の筋肉を使って食品を移動させることが徐々に出来にくくなる。このことを評価するために粘性や付着性をも併せ持つデンプンゲル検査食を考案した。しかし、物性が均一で、つねに一定のテクスチャーを持つデンプンゲルを調製することは困難を伴った。今年度は、工業的に一定の品質の小さい団子状のデンプンゲルの調製を外部に委託することが出来、冷凍保存して、蒸し加熱解凍後、官能評価を行なうことが出来た。 65歳以上の高齢者75名の協力を得て、寒天ゲルとデンプンゲルの咀嚼後の粒度を写真撮影し、画像解析を行なった。すべての粒子の大きさを計測し、大、中、小のグループに分けた。また、粒子のばらつきの程度を知るために標準偏差を求めた。標準偏差が小さいことはよく咀嚼が出来ていることを示す。そこで、標準偏差と粒子の大きさから、高齢者を寒天ゲルもデンプンゲルもよく咀嚼できるグループから、どちらも咀嚼できないグループまで、7つのグループに分けることが出来た。今後はグループ別に咀嚼機能を残しながら食べやすい調理法を提案したい。
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