食物繊維がもたらす生理作用は摂取する対象者の身体状況により有用性が変化する。食物繊維の摂取によって消化管内容物の粘度が上昇し、栄養素の消化吸収が抑制されることは糖尿病や肥満の予防には効果的である一方、幼児や高齢者では低栄養の原因となる可能性がある。本研究では調理に伴う食物繊維の性状変化に注目し、調理によって食物繊維の含量、粘度などの性状をコントロールすれば、その生理作用を制御できるのではないかと考えた。調理における加熱方法や調味料の添加などに伴う食物繊維の含量と性質、生理作用の変化を明らかにし、調理によって対象者に適した生理作用もたらす食物繊維の性状をコントロールする可能性を検討することを目的とした。 平成20年度の研究実施計画では、さつまいもを試料とし加熱方法の影響を検討する予定であったが、試料入手等の都合により平成22年度に実施予定であった米を試料とし炊飯方法の違いが飯に含まれる食物繊維の性状と生理作用に及ぼす影響について検討した。白飯、味付け飯、ピラフについて比較した結果、ピラフにおいて食物繊維量が多く、粘度が低いことが示された。炊飯方法により食物繊維量が異なる要因を明らかにするため、飯の糊化度ならびにレジスタントスターチ量を測定した結果、ピラフの糊化度は白飯や味付け飯に比べて低かったが、レジスタントスターチ量には有意差は認められず、食物繊維量が異なる要因をデンプンの消化性の違いから説明することはできなかった。平成21年度も継続して検討する必要がある。生理作用に及ぼす影響については、豚盲腸内容物を利用したバッチ培養法により腸内発酵性を調べた。粘度の高いピラフの食物繊維では培養初期における脂肪酸産生量が少なく発酵性がやや低いことが示された。今後、動物実験において炊飯方法に伴う食物繊維の性状変化が飯のデンプンや他の栄養素の消化吸収に及ぼす影響を動物実験において検討していく。
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