研究概要 |
食物繊維がもたらす生理作用は摂取する対象者の身体状況により有用性が変化する。食物繊維の摂取によって消化管内容物の粘度が上昇し、栄養素の消化吸収が抑制されることは糖尿病や肥満の予防には効果的である一方、幼児や高齢者では低栄養の原因となる可能性がある。本研究では調理に伴う食物繊維の性状変化に注目し、調理によって食物繊維の含量、粘度などの性状をコントロールすれば、その生理作用を制御できるのではないかと考え、調理に伴う食物繊維の含量と性質、生理作用の変化を明らかにすることを目的とした。 これまでの研究により、さつまいもは加熱によって水溶性食物繊維が増加し、加熱時間の長い蒸し加熱の方が電子レンジ加熱に比べその影響が顕著であること、米は炒めてから炊飯するピラフの方が白飯より食物繊維含量が高いことを明らかにした。そこで本年度は、このような加熱方法の違いに基づく食物繊維含量の違いが食後血糖値に及ぼす影響を動物実験により検討した。蒸し加熱あるいは電子レンジ加熱したさつまいもを凍結乾燥後10%水溶液とし、6週令のWistar系雄ラットに胃ゾンデで経口投与し(1g/体重100g)、0.5,1,2,4時間後に尾静脈より採血した。0.5時間後の最高血糖値は、食物繊維含量の高い蒸し加熱試料投与群の方が電子レンジ加熱試料投与群に比べて高かった。蒸し加熱によって増加した水溶性食物繊維による糖の吸収抑制は認められなかった。白飯とピラフについても同様に食後血糖値への影響を調べた結果、食物繊維含量の高いピラフ投与群は白飯投与群に比べて最高血糖値が有意に低かった。米においては加熱方法の違いに基づく食物繊維含量の違いが、食後血糖値の変化に影響を及ぼす可能性が示唆された。
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