研究概要 |
本研究では、調理によって食物繊維の含量、粘度などの性状をコントロールすることでその生理作用を制御できるのではないかと考え、調理に伴う食物繊維の含量と性質、生理作用の変化を明らかにすることを目的としている。これまでにさつまいもは加熱によって食物繊維含量が増加し、加熱時間の長い蒸し加熱の方が電子レンジ加熱に比べその影響が顕著であることを明らかにしている。本年度は、このような加熱方法の違いに基づく食物繊維含量の違いが消化管の形態や消化吸収機能、腸内発酵性に及ぼす影響について、ラットを用いた動物実験により検討した。さつまいもは茨城県産ベニアズマを用い、厚さ2cm,直径4cmの円形にくりぬき、未加熱,蒸し加熱,電子レンジ加熱試料を調製した。6週令Wistar系雄ラットを用い、AIN-93G飼料組成のセルロースをコーンスターチに置換した無繊維飼料を摂取させた対照飼料群と、さつまいも摂取群(未加熱群,蒸し加熱群,レンジ加熱群)の計4群(1群7匹)を設けた。さつまいもは他の飼料組成と混合せずに給与し、さつまいもと他の飼料組成の摂取量が偏らないよう、給与量を予備飼育時の飼料摂取量の80%に制限し、全量摂取させた。20日間飼育後、消化管内容物ならびに組織重量を測定した結果、盲腸内容物重量は蒸し加熱群3.41g,レンジ加熱群3.22gとなり、未加熱群2.19gや対照飼料群1.27gに比べて有意(p<0.05)に増加した。加熱によってさつまいもの食物繊維量が増加したことが原因と考えられる。盲腸組織重量は蒸し加熱群0.75g,レンジ加熱群0.68g,未加熱群0.55g,対照飼料群0.40gで各群間に有意差(p<0.05)が認められた。電子レンジ加熱よりも蒸し加熱したさつまいもの摂取の方が盲腸組織重量に与える影響は大であり、腸内発酵にも影響を及ぼしている可能性が示唆された。
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