近年、食の欧米化や高齢化を迎える中、心筋梗塞や脳血栓などの血栓症やガンが急増し社会的に重大な問題となっている。本研究では食の欧米化の代表ともいえる食肉に注目し、これまでの研究成果を踏まえ、医食同源・予防医学の観点に立ち、毎日の食生活からこれらの疾病を予防することを主目的として、担子菌(きのこ)の発酵能を利用してコレステロールを低下させ、血栓症やガン予防に効果を示す機能性食肉の開発を試みた。したがって、本研究の主要な実験内容は、食肉を発酵する担子菌のスクリーニング、血栓症を予防する担子菌由来および発酵作用によって生じる抗トロンビン活性、線溶活性、抗酸化活性の測定、そしてこれらの種々の生理活性物質が新たに付加された機能性食肉の製造である。 平成23年度は、平成20年度~平成22年度の発酵実験の結果から、食肉の発酵にはスエヒロタケが適しており、特に発酵に伴って肉懸濁液中のトリグリセライド量が減少し遊離脂肪酸が増加していること、トータルコレステロールおよび遊離コレステロールも減少の傾向を示したこと、それぞれの発酵期間後に独特の風味を呈することなど、機能性のみならず、新しい加工食品として有効であることが示唆された。また、発酵期間に伴い抗酸化活性が増加の傾向を示し、担子菌の発酵によって、酸化されやすい食肉を新たに抗酸化能が付加されたものに改善できることが明らかとなった。今後の課題として、より安定に、より大量に発酵食肉を生産する方法を確立すると共に、これらの現象のエビデンスの解明を目指したいと考えている。
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