テクスチャーの官能評価において、「かたさ」「サクサク感」など評価項目に用いる用語は重要な役割を担う。このとき、テクスチャー用語が体系的に整理されていれば用語選定や定義づけは効率的である。そこで本課題では、すでに収集した日本語テクスチャー用語445語を用いて、食物からも用語からも検索できる官能評価に有効なデータベースを作成することを目的とした。今年度は、代表的な食物150品目を描写する候補用語の収集を完成させ、用語間の関係を明らかにして、データベースを作成した。 1)各食物を描写する用語収集の完成 前年度までに面接調査、質問紙調査を行って選定した食物名150品目のうち、今年度は50品目について、テクスチャーの官能評価に十分な経験のある評価員16人に対し、食物名を提示してそのテクスチャーを描写する用語を選択させる質問紙調査を実施した。これによって、前年度までのデータと合わせて、食物150品目に対する描写用語のデータ収集が完成した。 2)用語間の関係の解析 上記1)のデータにコレスポンデンス分析を適用して、テクスチャー用語全体の構造を探索的に解析した。その結果、第1軸は「破砕するか否か」の軸、第2軸は「空気の軽さ」の軸と解釈できた。さらに、得られた用語の空間配置から各用語間の類似性および親近性を明らかにした。同じ音から派生した擬音語・擬態語("サクサク"、"サクッ"等)、同じ漢字の読みで意味が似ている用語("硬い"と"堅い"等)は近い距離に布置されており、類似性が確認できた。また、得られた空間座標にクラスター分析を適用したところ、445語は15クラスターに分類され、描写する対象となる食物の観点からの用語間の親近性が示された。 3)データベースの作成 日本語テクスチャー用語445語について、描写対象の食物名のデータ、類似性、親近性の強い用語のデータの情報等を含めてデータベースを作成した。
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