食品添加物のカラギーナンは、加工中や摂取後に様々な要因で低分子化を受ける。この低分子化されたカラギーナンは消化管などを通じて生体に吸収される。カラギーナンが人体に与える影響については、未だ明確にされていないため、特に消化管などから吸収されやすい低分子カラギーナンの生理作用を正確に調べる必要がある。そこで本年度はまず、構造の異なる主要3タイプのカラギーナンポリマー(カッパ、イオタ、ラムダ型)に、深海微生物から取得した新規3種のカラギーナン分解酵素群を作用させ、単一構造を持つ純度の高いカラギーナンオリゴ糖調製した。続いて、これを用いてヒト血球培養細胞に対する各オリゴ糖が与える影響を評価した。その結果、カラギーナンの構造に依存して、その作用が異なることを初めて見出した。 また本研究で開発したカラギーナン分析法が、飲食品に添加された未知組成を持つカラギーナンの検出・分析に適応できるかについて、諸検討を行った。市販飲料サンプルに対し直接、3種のカラギーナン分解酵素を作用させ、酵素反応により生じたカラギーナンオリゴ糖を固相抽出法により抽出した。得られたオリゴ糖をHPLC分析した結果、飲料中に含まれる10ppm以上のカラギーナンを構造特異的に検出することが可能であった。飲食料に含まる未知カラギーナンの分析においては、糖質に代表される多量の夾雑物からの妨害があるため、有効な分析手段がこれまで無かった。本研究の成果により、酵素群を用いた飲食品中のカラギーナンの検出・組成分析法は、簡便かつ極めて特異性が高いことを明らかにした。
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