研究概要 |
本研究は, 各教科の境界領域に位置する食教育を題材に, 現在ある教科教育の応用学習として食教育を組み込む可能性を探り, その教育導入効果を明らかにすることを目的としている。具体的には, 理科の基礎知識の応用として調理操作や食品加工, 電気調理器具等で活かされている原理を利用できないか, 理科教育でも家庭科教育でも利用可能な学習効果の高い実験的教育の開発をし, これらの教育が各教科による基礎知識の必要性の理解と, 教科を越えて知識を運用する力の向上に寄与できるかを検証することを試みる。 本年度は文献調査, アンケート調査, 教育効果を上げるための実践的調理実験の検討の3方向からのアプローチを試みた。これらの研究活動による本年度の成果は以下の通りである。 1) 食教育の重点項目である食文化の教育も重視し, 実験教材として大豆及びその加工食品の可能性を検討するため, 文献調査及び若い世代を対象とした知識調査を行った。その結果, 大豆を中心とした和食文化の教育による, 社会, 理科, 家庭科の教科を連動させた効果的な教育の可能性が考えられた。 2) 中学校及び高等学校向けの教材として, 蒸し調理, 電子レンジ調理, 過熱水蒸気調理を用いて加熱調理の科学が理解できる教材の開発を検討した。家電メーカーにより謳われているような過熱水蒸気調理に関する食材変化は必ずしも得られず, 実験教材としてはあまり適さないことが確認された。 3) 学校で行われるような知識教育が難しいとされる高齢者を対象に, 調理実験的な手作業を加えた食教育による学習効果を実験的に検証した。その結果, 学習に対するモチベーションが上がることが確認され, 実動的教育の重要性を裏付ける結果が得られた。
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