研究概要 |
本研究は,各教科の境界領域に位置する食教育を題材に,現在ある理科や社会をはじめとする教科教育の応用学習として,食教育を学校教育に取り入れる可能性を探るものである。今年度の研究成果は以下の通りである。 1)食文化教育教材として,行事食(主に和菓子)や日本における調理道具発展の歴史に関する資料収集を行い,一般向け食文化教育として短編話(51話)にまとめ,新聞を通して社会に還元した。 2)昨年度までに研究結果から,食教育教材として大豆を用いた栽培~加工までの一貫教育の有効性が考えられたため,今年度は大豆の教材価値を見極めるため,実際に大学農場にて栽培実験を試みた。早生~名残まで大豆4品種を試験したが,小中学校の学期制への適応が難しいこと,近年の温暖化をはじめとする天候変動から教材として難しい点があることが確認され,大豆は栽培からの教材としてではなく,食品加工の学習教材として主に教材化を図ったほうがよいことが推察された。 3)身近な食生活を題材とした理科の応用実験教材として,リンゴジュースを用いた冷蔵保蔵における酸化(劣化)実験の可能性が見出せた。リンゴジュースは,手絞りにかなり近いものからクリアタイプまで現在多くの種類が市販されている。市販品と家庭での手絞りの違いはどこにあるか,栄養面(抗酸化物質(ビタミンC)の変動),おいしさなどを追及する教材としての可能性が示唆された。 4)近年,子どもらの手先が不器用になったと言われているが,食教育では手を使う体験学習の効果も期待されている。今年度は小学生(1~6年生)を対象に,現在の子どもらの技能水準を確認し,包丁を用いた体験学習の教育効果について検証を試みた。その結果,包丁を用いた体験学習は学習への意欲向上に役立ち,小学校高学年の家庭科の授業を待なずに,小学校低学年のうちから教育手段として有効であることが推察可能となった。
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