研究概要 |
本研究は小中学校で行われる食教育について,現在の子どもらに必要とされる内容,そして教育効果の期待される方法について検討し提言を試みるものである。今年度は本研究の計画最終年度の3年目に当たり,前2年間の結果を総括するとともに,本研究テーマの今後の展望を見極めることを主眼とした。研究成果は以下の通りである。 (1)H20・H21年度の研究結果を踏まえ,今年度は更なる文献調査を行い,食教育は家庭科教育の中だけで行うことは時間的に難しく,子どもの発達に即して教育の適切な時期を考えた場合,調理技能も含めた食教育を小学校中学年から積極的に取り入れることが望ましいこと,小中の家庭科教育における食教育内容の重複を無くし,現在の食生活に適応した知識と技能に向けて教育内容の精査が必要であることなどを明らかにし,大学紀要論文としてまとめた。今後,小中学校家庭科教育における食物分野教育のカリキュラムの整理に資するものと考えられる。 (2)前年度までの研究で,食文化に関する家庭科の食物分野における戦後の教育内容についての文献調査及び大学生らを対象としたアンケート調査から,食品の保蔵に関する若年層における知識の欠落が問題視された。冷蔵庫や加工食品の発達に伴い,食品の劣化を防ぎ自身及び家族の健康を守る必要性が少なくなってきていることに影響するものと考えられ,今年度の調査研究では,食文化に欠かせない発酵食品の外部化が進み,生活環境を利用した様々な食品の保蔵調理手段を家庭で見て学ぶことができなくなっていることが示唆された。これらを踏まえ,食文化の継承を支えるために学校教育でこれらを取り上げる必要性が考えられ,市販リンゴジュースと手搾りリンゴジュースの違いに着目した食品の保蔵を学ぶ化学的視点に立った教材の検討を行い,大学紀要論文としてまとめた。食品保蔵をテーマとした理科教育の応用学習教材の可能性を示すことができた。
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