研究概要 |
平成20年度は,申請者が開発した機器を用いて,嚥下時の生体情報である下顎部の表面筋電図,頸部嚥下音,甲状突起の運動,呼吸周期そして脳波を記録した.平成20年度の第一目的は「摂食時および摂食中の脳波の解析」,第二目的は「脳波リアルタイム解析ソフトの開発準備」である. 第一の目的達成のために健康学生を対象に嚥下時のデータ採取を行った.対象は健康学生9名(男性4名,女性5名),脳波以外の生体情報は研究者がこれまで行ってきた手法で採取した.脳波は表面電極法を用い,国際10-20法に基づいて前額部(Fp1, Fp2),前頭部(F3, F4),頭頂部(C3, C4),後頭部(P3, P4)の8か所より記録した.採取した電位は増幅器とA/Dコンバータを介してPCに取り込んで,オフラインで解析した.今回用いた食材は「プリン」と「ごはん」であり,これらを食べた時に発生する脳波を分析した.その結果,嚥下後は脳波の低電位化が見られ,嚥下前に比較し有意に減少した(p<0.05).摂食後ではθ波とα波の増大,そしてγ波とβ波の減少が見られた.以上から「摂食活動により胃に食物が流入することで心理的に落ち着く」ということが示唆された. 第二の目的である脳波のリアルタイム解析ソフトの開発は現在進行中である.これまで脳波の周波数解析はオフラインで実施されていた.今回のリアルタイム解析は,この領域において新しい試みである.このソフトは平成21年度前半に完成予定であり,嚥下時の脳波をリアルタイムに解析できることにより,嚥下が脳機能に与える影響を解明することが可能となる.このことは嚥下障害の改善・予防に結びつくことが期待される.
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