研究概要 |
今年度は最終年度になる.そこで,摂食食物の種類(味:Brix, pH)の違いが脳波および心電図に与える影響について検討を加えた.用いた食物は市販品のゼリー(カレー味,梅干し味,オレンジ味),ヨーグルトとした.健常成人13名を対象に実験を行った.脳波では,一口目にすべての食品においてアルファ(α:8-13Hz)帯域の減少がみられた(p<0.05).同様の繰り返し摂取を行ったところ,梅干し味,オレンジ味,ヨーグルトはα帯域の減少がみられたが,カレー味だけが上昇した.次に心電図解析から,食物摂取によりR-R間隔の延長が生じた.すなわち,食物摂取により心拍数が減少することがわかった.心電図の周波数解析を行った結果,食物摂取後にLF/HF値が増大したことから交感神経活動が増大することが確認された. さらに今年度は嚥下障害を有する高齢者を対象に実験を行った.一般化されている嚥下体操を高齢者(5名うち3名が誤嚥性肺炎の既往あり)に実施した.一週間に6日,4週間を昼食前に約5分間実施した.評価として頸部筋電図,反復唾液嚥下テスト,音節交互反復運動用いた.その結果,頸部から記録された電位は介入後に減少がみられた.反復唾液嚥下回数は増加し,音節交互反復運動では発生回数の増加がみられた.この結果から,頸部を中心とする嚥下体操は唾液分泌を促進させ,口腔周囲の筋収縮が効率的に活動を促進されることが示された.今回のデータから,異なった食物と運動との組み合わせにより,脳活動および筋活動を促進することが示された.
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