食餌中の亜鉛不足が、体内の亜鉛結合タンパク質に与える影響を調べるため、亜鉛欠乏餌を与えて飼育したマウスの肝臓、膵臓及び精巣細胞の可溶性画分中タンパク質量及び亜鉛濃度を調べて対照マウスのそれらと比較するとともに、臨床的知見を得るために血液生化学的検査も行った。 (1)肝臓、膵臓及び精巣については、それぞれ臓器の細胞について遠心分離法による分画を行い、可溶性タンパク質のSDS-PAGEを行うとともに、ゲルクロマトグラフィーによるタンパク質の分離を行い、各フラクション中のタンパク質量及び亜鉛濃度を分析した。その結果、 (1)肝細胞では、分子量が約150kDaのタンパク質量が低下する。 (2)膵臓細胞では、ある分子量領域のタンパク質中の亜鉛含有量が著しく低下する。 (3)精巣細胞では、亜鉛欠乏時に誘導されるタンパク質、あるいは、本来であれば合成されるべきタンパク質の前駆体と考えられるタンパク質の存在が認められる。 といった知見が得られた。 (2)亜鉛欠乏餌を与えたマウス及び対照マウスの血液を心臓から採取し、遠心分離を行い、血清中の酵素活性(LDH、ALP、GPT、GOTなど)、電解質濃度(Mg、Ca、無機リン)、有機塩(クレアチニン、尿素窒素)、血糖量、タンパク質量(総タンパク、アルブミン)などの血液生化学的検査を行った。その結果、血清中のアルカリフォスファターゼ(ALP)活性が低下するとともに、ブドウ糖濃度や無機リン濃度が低下する傾向が見られた。
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