近年、疫学的な調査により糖尿病患者は非糖尿病患者に比べ、がん発症率が高いとの報告がある。しかし、糖尿病と発がんとの関係を明らかにした基礎的研究はない。したがって、糖尿病と発がんの関わりを解明し、それらの予防法を確立することは、ヒトの健康長寿を考える上で極めて重要な課題である。糖尿病発症に伴い、ペルオキシナイトライトなどの活性酸素の産生やDNA付加体の生成が生体内で起こる。ペルオキシナイトライトは二級アミンと反応すると、強力な発がん物質であるニトロソアミンを生成する。また、加熱条件下でのメイラード反応により生成する発がん物質のヘテロサイクリックアミン類やアクリルアミドが糖尿病患者生体内において生成することも考えられる。本研究では、糖尿病と発がんとの関連をin vitro、in vivo試験で明らかにし、さらに予防効果を示す食品成分を探索することを目的として実験を行った。 ストレプトゾトシンを投与して作製したI型糖尿病モデルラットに一定期間、二級アミンを飲料水として自由摂取させ、各臓器におけるDNA損傷性、染色体異常誘発能検定したと強い遺伝毒性が確認できた。また、糖尿病ラットニトロソアミンを経口投与して、その毒性の変動を検定したところ、正常ラットに比べてその毒性は増強していた。 以上の結果より、糖尿病患者の生体内ではニトロアミンが生成すること、またニトロソアミンを食品を通して、摂取した場合、毒性が増強することが示唆された。
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