チアミン欠乏に対して高感受性を示すマウス系統と低感受性を示す系統(C57BL/6)とで、チアミンに関連する蛋白質のcDNAに塩基配列の違いがあるかどうか検討した。今年度はまずウェルニッケ・コルサコフ症候群で酵素活性の違いが報告されているトランスケトラーゼについて比較したが、両者に塩基配列の違いは認められなかった。次に、チアミントランスポータのひとつと考えられているSLC19A3について解析を進めている。 チアミン欠乏抵抗性遺伝子座の探索:チアミン欠乏高感受性マウス(雌)と低感受性系統(雄)との雑種第一代(F1、雌)を高感受性系統マウスの雄に戻し交配し(F2)を作成した。F2に対してチアミン欠乏実験を行ったところ、約20匹全てが低感受性の表現型を示した。このため、チアミン欠乏に抵抗性の表現型は、母性遺伝する可能性、あるいは複数存在する抵抗性遺伝子が独立に作用する可能性が考えられた。 チアミン欠乏高感受性マウスのローターロッドによる評価:チアミン欠乏症状の定量的な解析を行うため、ローターロッドによる検討を行った。その結果、予想に反し、死亡率やけいれんなどの神経学的異常で評価すると低感受性とされるC57BL/6マウスのほうが、高感受性マウスに比べてより早期から協調運動障害が現れることが明らかになった。 遺伝子欠損マウスによる検討:エタノール刺激によりNMDA型グルタミン酸受容体のチロシンリン酸化を行い、その機能を調節することが知られているFyn、および、チアミン欠乏により発現量が変化することが示されているコンプレキシンIIについて、それぞれ遺伝子欠損マウスを入手した。Fynマウスについては、解析に必要なホモ欠損およびヘテロマウスが得られたので、チアミン欠乏実験を行い脳の神経病理学的な解析を進めている。コンプレキシンIIマウスに関しては繁殖を進めている。
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