チアミン欠乏高感受性(TD-HS)および低感受性(TD-LS)マウスの系統間交配によるチアミン欠乏感受性遺伝子の同定:昨年度までの検討でTD-HSに対してTD-LSが優性であり、雑種第一代(F1)からの戻し交配実験により、この形質を支配する遺伝子座は複数存在し、うち一つは母性遺伝することが示唆された。本年度は、F1をTD-HSに二回戻し交配した戻し交配第二代(B2)に対しチアミン欠乏実験を行い、1)B2でも母性遺伝の効果が確認されたこと、2)母性遺伝の効果を除いた生存率解析ではB2とB1との間に生存率の大きな差を認めなかったことが明らかとなった。2)については、個体数が少なく(n=13)、founderとなったマウスの遺伝的背景に偏りがあったことが推測される。今後、より多数の親から生まれたB2を準備中であり.、チアミン欠乏実験を行い、高感受性マウスがすべて死亡する13日目以降に生存したB2マウスからゲノムDNAを抽出し、系統間マイクロサテライト多型解析を行って原因遺伝子座を同定する予定である。 チアミン欠乏感受性を支配する候補遺伝子の解析:チアミン欠乏実験により発現量が減少することが報告されているcomplexin II遺伝子のノックアウトマウスを入手し、繁殖を行ってきた。本年度は、野生型5個体、ホモ欠損型5個体を得ることができ、チアミン欠乏実験を行った。実験開始後12日目に脳を取り出し、Nissl染色を行い、神経細胞死の程度を評価した。その結果、視床外側膝状体の神経細胞密度がホモ欠損マウスで有意に減少していることが明らかとなった。現在、個体数を増し神経細胞マーカー(NeuN)を利用した確認実験を進めている。
|