胎生期の栄養状態は成長後の糖脂質代謝異常、心血管障害に関与することが知られている。そこで、糖尿病妊娠モデルラットに高脂肪食を与え、生まれた仔や孫に与える食餌の影響を検討した。 妊娠1日目のWistarラットを用い、ストレプトゾトシン投与による糖尿病モデルラット(D群)と生食を投与したコントロールラット(C群)を用いて実験を行った。普通食(C)、高脂肪ラード食(L)、高脂肪魚油食(F)をそれぞれ与え、6群(C-C、 C-L、 C-F、 D-C、 D-L、 D-F)で実験を行った。餌は仔・孫の3世代まで継続的に投与し、血糖値、血清脂質を測定した。出生4日目の仔や孫ラットより心臓を摘出し、心臓より抽出した可溶性蛋白質を用いて、インスリンシグナリングのAkt、 MAPキナーゼのp38、 ERK、 JNKのそれぞれについてリン酸化レベルを測定し解析した。 親の血糖値は糖尿病ラットではコントロールラットと比べ有意に上昇した。糖尿病ラットから生まれた仔の血糖値は出生時には有意に高値であったが、成長に従い正常値まで低下した。仔ラットの中性脂肪は糖尿病ラットのラード食(D-L)は、普通食(D-C)と比較して高値を示したのに対し、魚油(D-F)ではラード食(D-L)より低値を示した。Aktのリン酸化レベルは仔の代では糖尿病ラットの普通食(D-C)、ラード食(D-L)、魚油食(D-F)ではコントロールラット(C-C)と比較して有意に減少した。p38のリン酸化レベルは糖尿病ラットの普通食(D-C)やラード食(D-L)で高値を示したが、魚油食(D-F)では低下する傾向が認められた。 糖尿病妊娠ラットの高脂肪食の摂取は仔の出生時血糖値や中性脂肪値に影響を及ぼし、分子シグナリング解析により、その影響は新生仔の心臓においても観察された事から、母親が糖尿病であると生まれた仔は親の糖尿病の影響を受け、さらに胎生期の栄養状態がそれらに影響を及ぼすと考えられる。
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