研究概要 |
本年度は2系統のマウスを用いて中期(10週間)ならびに長期(17〜24週間)飼育を行い種々のマーカーについて検索した。使用した動物は、DIO(Diet Induced Obesity)マウスとして知られる高脂肪食を投与したC57BL/6Jマウスと精製飼料摂取により体脂肪蓄積が促進し,高血糖を発症するKK/Taマウスを使用した。 その結果、DIOマウスは10週間飼育と24週間飼育の比較をした結果、後腹壁脂肪、腸間膜脂肪の重量が1.5倍以上重くなり、腹腔内脂肪の蓄積が観察された。一方、KK/Taマウスは10週間飼育で体重のピークを迎え、17週間飼育時には糖尿病により衰弱し、全ての臓器が萎縮した。脂肪細胞サイズは、DIOマウスは10週間飼育と24週間飼育の比較でわずかに肥大化するのみで、脂肪細胞数の増加を示唆する結果であった。KK/Taマウスは細胞サイズが1/2程度に萎縮していた。血清生化学値は、DIOマウスが10週間飼育と24週間飼育の比較をした結果、血清グルコースならびにインスリン濃度の増加、肥満に伴うレプチン濃度の増加とアディポネクチン濃度の低下が観察された。KK/Taマウスでは、10週間飼育で血清グルコースとインスリン濃度が非常に高値を示し、糖尿病を発症していることが示唆された。17週間飼育時にはすでに衰弱のため血清生化学値は全て低下していた。血清の炎症マーカーでああるC-反応性タンパク質は、DIOマウスで加齢に伴い増加したのに対し、KK/Taマウスでは変化がなかった。TNF-αは両系統マウスともに検出限界以下であった。今後、炎症性マーカーの遺伝子発現を調べていく予定である。 以上の結果、DIOマウスでは、加齢に伴い、腹腔内脂肪の蓄積と脂肪細胞の機能異常がアデイポサイトカインの分泌量から示唆された。また肥満に関連する酸化ストレスマーカーであるC-反応性タンパク質も増加することが確認された。一方、KK./Taマウスは10週間飼育ですでに糖尿病を発症したが、炎症性マーカーの変動は脂肪細胞などには認められなかった。今後は、C57BL/6J系のマウスを基本に、初期炎症を発症するモデルをさらに検討していく予定である。
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