研究概要 |
本年度はB6系db/+マウス(レプチン受容体欠損ヘテロマウス)とそのワイルドタイプマウスに、高脂肪食と低脂肪食を11週間給餌し、肥満に伴い血液ならびに腹腔内脂肪組織の炎症性マーカーがどのように変動するか検討した。次に立KK/Taマウスを用い、低脂肪食で8週間飼育した場合と高脂肪食で15週間飼育した場合の血液ならびに腹腔内脂肪組織の炎症性マーカーの変動を比較した。 脂肪組織の蓄積は、B6系db/+マウスおよびワイルドマウスいずれも、高脂肪食により有意に蓄積量が多かった。ただし、内臓脂肪である腸間膜脂肪において、高脂肪食ではワイルドマウスが、低脂肪食ではヘテロマウスが有意に高かった。KK/Taマウスにおいては、高脂肪食の影響を受けにくく、B6系ワイルドマウスの高脂肪食と低脂肪食の中間の量であった。B6系db/+マウスの傾向は糖尿病を発症するKK/Taに似た挙動を示すことが推定された。 血液マーカーとしてCRP、TNF-α、TBARSを測定した結果、脂肪蓄積によらずいずれも有意な差は検出されなかった。全身の分泌量を反映する血液マーカーでは初期の炎症は検出できないことが認められた。そこで、局所的な影響を見るため、肥満に伴い脂肪組織に集積するマクロファージに着目し、F4/80で免疫染色を行った。その結果立低脂肪食ではほとんどマクロファージ免疫染色像が観察されなかったが、高脂肪食では顕著なマクロファージの浸潤が観察された。そこで、マクロファージに関連するmRNA発現量をリアルタイムPCRにて測定した。その結果、高脂肪食は低脂肪食に比べて、F4/80の発現が5倍、MCP-1の発現が3.5倍上昇した。TNF-αのmRNA発現量も高脂肪食で増加したが、F4/80,MCP-1ほどではなかった。 以上の結果、高脂肪食を負荷する実験モデルにおいてはC57BL/6Jマウスが適すると推定した。また、初期炎症のマーカーはマクロファージの浸潤度とマクロファージが分泌する炎症促進マーカーが有力であると推定した。
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