これまでの検討結果から、高脂肪食を負荷する実験モデルにおいてはC57BL/6Jマウスが適し、初期炎症のマーカーはマクロファージが関連する炎症促進マーカーが有力であると推定した。そこで、本年度はC57BL/6Jマウスに高脂肪食または高炭水化物食を投与し、1週、2週、4週目に経時的に解剖し、腹腔内脂肪組織(精巣上体周辺脂肪、後腹壁脂肪、腸間膜脂肪組織)の蓄積動態を調べると共に、脂肪組織中の炎症促進マーカーのmRNAの発現量をリアルタイムPCRにより分析した。その結果、精巣上体周辺脂肪および後腹壁脂肪重量は給餌開始1週目より高脂肪食群が高炭水化物食群に比べて有意に重量が重かった。また、その差は4週目で顕著な差となった。一方、腸間膜脂肪組織重量にはそのような傾向は観察されなかった。次に炎症マーカーを測定した結果、4週目に高脂肪食群のMCP-1のmRNA発現量が急増した。一方、高炭水化物群にはそのような増加は認められなかった。しかし、F4/80のmRNA発現量は4週目では増加ぜず、マクロファージの集積はまだ顕著ではないと推定した。一方、IL-6は高脂肪食群で増加傾向にあり、4週間の高脂肪食摂取は炎症状態の開始時期であると推定した。なお、前回と同様にTNF一αの発現は4週目では顕著ではなかった。次に、高コレステロール血症を起こすC57BL/6J系統のアポE欠損マウスならびに70mg/kg体重のストレプトゾトシンを微量投与して高脂肪食を与えた新規なII型糖尿病モデルマウスを用いて8~10週間の飼育を行い、同様の評価を行ったが、C57BL/6Jマウスほどの炎症が惹起されなかった。病態が進み過ぎない時期に評価すべきである可能性が示唆された。
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